いても同様である。都市の人口はもはや常住人口だけで把握しきれない時代に入ろうとしている。人が何処にベッドを持つか、と同時に何処に椅子を持ち、何処に関心を持つかによって都市活動はダイナミックに動く。関西都市圏づくりはそれに答えるものでなければならない。
1−6. 地域クラスターのイメージ
都市社会は既に新しい生活構造によって支えられる時代に入ろうとしている。第一に家族構成、そして家族生活の内容が変化した。高齢化・少子化・女性の社会進出、家庭生活内容の社会化、余暇時間の増大、家事労働時間の短縮、生活文化の高度化などその要因は多様である。地域社会もまた大きく変化した。モータリゼーションそして都市交通機関の発達は人々の生活行動圏を拡大し、かつ時間自由化を高めた。都市の生活空間は既にひとつの都市あるいは都市圏を越えていこうとしている。日常生活圏もそれにともなって拡大した。それは従来の近隣コミュニティの枠をゆるめ、重層的でかつ伸縮自在なフレームを持つに至った。その一方で高齢化社会に向けて、コンパクトな地域サービスの必要性が求められ、情報化社会の一側面として、パーソントゥハーソン・コミュニケーション機会の高度化が求められている。従来の近隣住区理論的枠組みにとらわれない、自由で包括的なコミュニティ像が新たに求められているのである。
2. 都市ならびに大都市圏の形成条件
阪神・淡路大震災の教訓を活かしつつ、今後の安全・安心な都市ならびに大都市圏をいかなる方向に整備を進めていくのか。これについて、多核ネットワーク都市形成の方向が必要である。これを柱にしながら、都市の生活空間形成あるいは都市機能配置のあり方などさらに盛り込むべき条件設定について、地球環境関西フォーラムにおける緊急提言委員会をべースに少数のメンバーで検討し、平成7年4月4日のフォーラムで提言を行った。その内容を以下に紹介し、本論の締めくくりとしておきたい。
(1)地域自然に共生する都市
地域の地盤・地質・地形・水系・植生・気象・風光・などの諸条件を、都市空間・都市機能の要因として活かし、都市活動に結びつける計画の発想を持つこと。その実現に向けた都市修復プランを策定すること。経済社会要因と地域自然要因の新しい計画的バランスの確立。
(2)生活の人間的尺度、行動システムに共鳴する都市空間日常生活圏、徒歩圏を再評価し、安全で快適な生活クラスターを都市構成の基本単位とすること。人間の自然な行為と共鳴し合う魅力ある空間構成。
(3)自立性を持ったクラスターの隣接開係によるバランスのとれた職住融合の強化
地域の自立性の弱体化は耐災害の抵抗力を低くする。また地区間の相互連携の必要性が示唆されている。職住の分離も昼間災害での混乱を大きくする。その対応策として自立クラスターの隣接連携システムを考えること。
(4)余力ある機能容量、代替性を備えた社会基盤システム
今の必要や問題解決に答える社会基盤づくりは、常にあと追い整備の不安を抱え、危機対応力を欠き、都市活力創造の包容力に欠ける都市を生来させる。また将来の社会基盤更新に際して、都市機能の低下を招く可能性を持つ。
(5)都市活動・都市生活のアジール(Asile)として活かせる公共施設群
使用目的に特化した公共施設づくりから、総合性が高くライフの永い生活の拠り所となりうる公共施設・公共空間群づくりの発想に切り替え、日常生活とも結びつけ、生活空間の高度化を実現すること。
(6)自立分散型都市のネットワークによる都市圏形成
都市機能の一極集中の危なさが明らかとなった。機能の分化集積を高め、相互連携をもって活動するネットワーク都市圏の形成が急務。都市を構成する様々な機関、企業活動、生活拠点について、分散連携システムの可能性を検討し実現に向けること。
(7)局所集中型の交通軸の分散・多重化と、都市圏交通・都市交通の分離・結合。その推進のための大都市圏整備機構の必要性
阪神間被災による市街地の孤立、都市圏交通の途絶、広域波及によって関西の経済社会活動は打撃を受けた。大都市圏の交通ネットワークの危機対応力、将来の施設更新に備えたシステム改造を計画的に進めなければならない。その計画主体・推進主体となる機関の創出を求めたい。
(8)大学等人材の集まる研究機関の郊外分散に対応する都心情報発信機能の整備その支援機能の活用
大学等研究機関の郊外分散自体は、都市機能の分化集積をリードする点で評価できる。また、高等研究教育機関の集中被災をまぬがれる点でもリダンダンシーの強化につながる。これら高度情報拠点の都心空洞化対策は必要であり、その修復によって、被災時の様々な支援活動をリードする拠点形成が可能となる。
参考文献
文1「持続可能な関西都市圏づくり」紙野桂人、都市問題研究 第46巻第9号、1994年9月
文2「都市ならびに大都市圏の将来構想に向けて」紙野桂人、都市問題研究 第47巻第7号、1995年7月
文3「持続可能な関西都市圏づくり」地球環境関西フォーラム・都市環境分科会、1994年7月
文4「これからの安全都市づくり」日本都市計画学会関西支部震災復興都市づくり特別委員会編著、1995年10月
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